内容更新:2026年9月7日
内装会社の売却準備では、決算書に加えて「どの工事で、どの程度の利益が残り、いつ入出金するか」を説明できる資料が役立ちます。店舗改装、オフィス移転、原状回復などは工期や発注方法が異なるため、売上合計だけで比較すると、追加変更や未請求分、外注費の負担を見落としやすくなります。
まずは既存の工事台帳を使い、見積・注文・実行予算・請求・入金を同じ案件番号で結び付けます。本記事の表は、初回相談と買い手の調査に向けた整理例です。資料を揃えたことだけで譲渡価格や成約が決まるわけではありません。
最初に揃える工事資料と確認事項
全案件を一度に作り直す必要はありません。直近の完了工事と進行中の主要工事から始め、基準日と更新担当を決めます。原本を残し、相談用の写しでは元請名や現場住所を案件IDに置き換えてください。
表は横にスクロールできます。
| 項目 | 手元で集める資料 | 照合する内容 |
|---|---|---|
| 契約と変更 | 見積書、注文書・請書、契約書、変更指示・合意の記録 | 当初範囲と追加範囲、金額、工期、未合意事項を分ける。口頭依頼は日時・相手・内容を記録する。 |
| 工事別原価 | 実行予算、材料仕入、外注費、現場労務費等の集計 | 予算と実績の差、未着請求、手直し費用を確認する。費用の集計範囲を各工事で揃える。 |
| 受注残と進捗 | 受注一覧、工程表、出来高・検収の記録 | 未着工・施工中・完了を区別し、残工事と残原価の見込み、担当者、予定工期を記す。 |
| 請求と入金 | 請求書、入金予定表、入金実績、前受金の明細 | 未請求・未入金・回収条件未確定を区別する。前受金に対応する未施工部分も確認する。 |
| 外注先への支払 | 外注注文、請求、支払予定、単価・締日等の取引条件 | 発注済み未請求額と支払時期を確認し、元請からの入金より先に必要になる資金を把握する。 |
| 継続性と懸案 | 元請別売上、主要担当者・協力会社一覧、手直し・保証対応の記録 | 特定取引先への集中、代表依存、未解決の指摘と対応担当を整理する。継続未確認は未確認と表示する。 |
受注残・未成工事・入金予定を混ぜない
受注済みの工事があっても、その金額がそのまま将来の利益や現金になるわけではありません。施工に必要な材料費、外注費、現場人員、工期の変更可能性を併せて確認します。見込み案件は正式受注と分け、口頭内示しかない案件には根拠と確認状況を添えます。
また、工事の進捗、会計上の売上・未成工事の処理、請求日、入金日は同じとは限りません。工事台帳と月次試算表に差がある場合は、金額を無理に合わせず、締日のずれ、未着請求、計上方法等の理由を一覧にします。会計上の扱いは顧問税理士等と確認し、集計の前提を買い手へ伝えます。
- 基準日は統一し、後日届いた請求書や追加合意は更新履歴を残す。
- 請求済みでも回収に争いがある金額は、通常の入金予定と分ける。
- 工事ごとの残原価の見込みには、作成者と見積時点を付ける。
追加変更は「依頼・合意・施工・請求」で追う
追加工事は、現場での依頼を受けたこと、工事内容と金額に合意したこと、施工したこと、請求したことを別々に記録します。メールや打合せ記録、図面の改訂、写真、変更見積を案件番号でまとめ、未合意の費用を確定済みの売上のように説明しないことが大切です。
国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン第12版(2026年1月)は、元請負人と下請負人の関係について、当初契約や追加・変更契約、工期・代金等の留意点を示しています。契約確認の参考にし、記録の有無だけで法令適合や代金回収を断定せず、個別の契約と経緯を確認します。
粗利の差を説明できる状態にする
工事別の粗利を見るときは、原価に含めた費用を明らかにします。材料と外注費だけの集計と、現場労務費等を含む集計では比較条件が異なります。会社全体の販管費や、代表が無償・低負担で担っている営業・見積業務も、工事別粗利とは分けて整理してください。
採算が低い工事は隠さず、短納期、夜間作業、資材高騰、手直し、追加変更の未回収などに原因を分けます。改善済みのものと今後も発生し得るものを区別し、見積方法や外注条件を変更した場合はその記録を添えます。繁忙期だけの実績を通年の採算とみなさないことも重要です。
企業価値はこの資料だけで算定するものではありません。継続収益、資産・負債、必要な運転資金、元請や施工管理者の継続、取引方法と引継ぎ条件などを併せて検討します。一律の売上倍率で価格を約束せず、資料に裏付けられる事実と将来の見込みを分けて説明します。
初回相談用は匿名の集計から
例えば、初回の整理用資料では実在顧客の名称を「元請A」、現場を「案件01」とし、正確な所在地・担当者の連絡先・施工写真の看板などを伏せます。これは仮の表記例です。案件IDと実名の対応表は別に保管し、詳細資料を誰へどの段階で見せるかを確認します。
匿名化しても、特徴的な工事や限られた商圏の情報から会社が推測される可能性はあります。秘密保持と情報開示の順番も併せて確認し、資料の範囲を決めてから共有してください。
未整理の資料から相談できます
最初は、決算・月次資料、主要工事の一覧、継続したい雇用や元請との関係、未解決の工事を把握できる範囲で整理すれば出発点になります。足りない資料には「未作成」「確認中」と書き、次に誰が確認するかを決めます。
当センターが譲渡企業様から受領する相談料・着手金・中間金・月額報酬・成功報酬は0円です。外部専門家、各種調査、登記、税金、公租公課、実費等の第三者費用は含みません。必要な費用と負担者は事前に確認し、買い手側の条件とは区別します。詳しい範囲は内装M&A総合センターの料金・支援案内をご覧ください。

